今年の一枚
久しぶりの更新ですが、いよいよ今年も年末ということで、今年も世界各国から数々の地図切手が発行された中から「この一枚」として取り上げたのが上の小型シートです。この小型シートは今年2月にポルトガルから「遍歴記」刊行400年を記念して発行されたものです。
「遍歴記」とは貿易商人の旅行作家ピントによるアジア諸国の紀行文で1614年に刊行されています。ポルトガル版「東方見聞録」といった感じです。日本に関する記述もあり、同時に発行された切手には日本の武将も描かれています。
私が注目するのは小型シートの方ですが、切手部分からシート地にかけて描かれているのは1623年にアントニオ-サンチェスによって製作された世界地図です。実はこの地図、私のメインテーマである「地図の歴史」の観点からは特異な地図の一つになります。
当時のヨーロッパはポルトガルに代わってアジア貿易を独占したオランダの全盛時代で、印刷技術の発達もあって、オルテリウス、メルカトル、ホンディウスと地図の歴史においてもオランダが全盛で、次々と地図帳が製作されたアトラスの時代です。それらの地図帳に掲載された地図にも大航海時代に製作されたポルトガルやスペインの地図を参考にしている面が多いのですが、今回紹介したサンチェスの地図は、そのような時代(16世紀)と同様のポルトガルの地図ということになります。
コンパスローズや方位線、ポルトガルやスペインの旗が多く描かれた(さらに、日本の上には十字架も)ポルトラノと呼ばれる海図を継承し…