領海裁判

   前回に続いて国境がらみの切手です。以前、ウクライナの地域シリーズを紹介していましたが、マレーシア航空機の撃墜事故以降ウクライナ情勢は混迷をきわめています。今日取り上げたのは、そのウクライナと隣国ルーマニアとの黒海における領海境界の国際司法裁判所の裁定5周年を記念して、本年ルーマニアから発行された小型シートです。  切手部分を見ると線が引かれていますが、西側の点線の直線がウクライナの主張するラインで、その東側の折れ曲がった点線がルーマニアの主張するラインでした。これらの主張には石油と天然ガスの存在が絡んでのことでしたが、国際司法裁判所の裁定で決定されたラインが赤い線で、大部分がルーマニアの主張するラインと合致しています。  このような2国間の領土紛争などを国際司法裁判所に持ち込む場合は、当事国双方が国際司法裁判所での裁判開始に同意することが必要になります。例えば竹島問題は現在の所、国際司法裁判所において解決を求めることは実現していません。この竹島問題については前回紹介した郵便学者内藤陽介さんの著書『朝鮮戦争』(えにし書房)に李承晩ラインと合わせて興味深い記述があります。    ところで、小型シートの下地は黒海周辺が描かれた古地図ですが、この地図は1590年版のオルテリウスの地図帳「世界の舞台」に掲載されているもので、地名もはっきり確認できて、地図切手ファンとしてはお気に入りの1枚になりそうです。

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朝鮮戦争

   先日まで開催された韓国ソウルでの世界切手展、日本からの出品はなかなかの好成績のようで、大金賞4、金賞8という結果が出ていますが、テーマティクでは2作品中大沼さんの「ベートーベン」が昨年のブラジル展に続いて大金、内藤さんの「香港の歴史」が金とこちらもすばらしい結果です。    ということで、上の切手は韓国がらみで、朝鮮戦争休戦協定50年を記念してカナダから2003年に発行されたものです。図案には国連軍の爆撃機と兵士の写真、そして北緯38度線が金色で、軍事境界線が赤色で示されています。よく南北朝鮮の境界が38度線という表現が使われますが、厳密には一致していないということがこの切手図案でよくわかります。また,耳紙のカラーマークは朝鮮半島の地図の形になっています。  さて、この朝鮮戦争に関しては今回の国際切手展で金賞を受賞した郵便学者内藤陽介さんの著書「朝鮮戦争」(えにし書房)が刊行されました。朝鮮戦争を郵便資料を用いて解説する切り口の好著です。ぜひ御一読を。

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カリブ海

     先日まで開催された全日展(全日本切手展)は無事盛況のうちに終了したようですが、関係者のご尽力には敬意を表します。当方は都合がつかず参観できませんでしたが、競争展示に加えて企画展示も実際に見れなかったのが残念でした。  上の切手は、今回の企画展示の一つカリブ切手展にちなんで取り上げたものです。カリブ海にはコロンブスが発見した島が多くありますが、それらを含んでコロンブスの四回の航海航路を示したカリブ海の地図が図案のこの切手、ちょっと変わったところでマルタ騎士団という国?から1992年に発行されたものです。なかなか渋い図案と気に入っている一枚です。    さて今回の全日展のテーマティク部門では、レギュラークラスで金賞、ワンフレームクラスで大金銀賞とランクアップされた作品がありました。これも実際に参観できず残念でしたが、フィラテリストマガジンの号外での自己予告ページを見させていただいて納得のいくところです。

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