陸軍による地形図製作

 前回紹介したような三角測量などの測地事業はその後の世界各国の地形図製作へと発展していきます。地形図製は各国の威信をかけた国家事業として,また,軍事的には戦略的に不可欠なものとして製作されていきます。  そのために地形図は各国の軍隊(陸軍)がその製作に当たる場合が多く,戦前までの日本もそうでした。現在でもそれが継続している国もあります。  そこで,今日取り上げたのは,引き続きエクアドルの切手ですが,同国の陸軍地理局50年を記念して1978年に発行されたものです。このように陸軍の中に地理または地図,あるいは測量局のような部局を設置して正確な地形図製作を進めるのが一般的です。  切手印面にはその地形図製作のための空中写真を撮影するイメージ図が,飛行機と同国の地図とを描いて示されています。地形図製作のための測量は,隊員による測量器機を利用した現地測量によって長らく行われてきましたが,1920年代にこのような空中写真を利用する空中写真測量が始まり,その後の主流になっていきます。

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エクアドル三角網地図

 エクアドルの地図切手が続きますが,今日取りあげたのはエクアドル付近の三角測量網地図が描かれている地図切手です。上の切手は1986年にエクアドルから,ラ・コンダミンの測地事業開始250年を記念して発行された小型シートを構成する切手の一種です。  この測地事業は1736年に始まったものですが,その発端は当時論争されていた,地球上の子午線測量に伴う,地球は完全な球体ではなく南北に長い扁長楕円体か,南北に短い扁平楕円体かという対立する理論に決着をつける必要からでした。  当時のフランス学士院は,赤道付近のペルー~エクアドルにラ・コンダミンを,北緯60度付近の北欧ラップランドにモーペルテュイをそれぞれ派遣して,子午線上緯度1度の距離を三角測量によって正確に測定させた訳です。その結果,赤道付近の方が緯度1度の距離が少し短いことがわかり,地球は南北にやや短い扁平楕円体であることが判明しました。  いずれにしても,南米の赤道付近と寒冷地のラップランドにおいて,測量を実施するのには非常に厳しい自然条件であったことが想像できますが,これらの測地事業が近~現代の正確な地図作りの基礎になっていることは言うまでもありません。

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アマゾン上流

 アマゾン川上流の支流は源流のあるペルーを含めて多くの国にまたがりますが,赤道直下の国エクアドルもその一つです。ということで,今日取り上げたのは,そのエクアドル国内のアマゾン上流部が描かれた地図切手です。  上の切手は,現在の首都キトに高等裁判所が設立されてから400年になるのを記念して1964年に発行されたものです。インカ帝国の一部であった現在のエクアドルは,1533年にピサロの征服によりスペイン領となりますが,1964年の400年前ということは,その約30年後の1564年に裁判所が設立されたことになります。  切手印面の地図をよく見ると,エクアドルにおけるアマゾン上流部が詳細に描かれており,その流路がよくわかります。エクアドルは国の中央部をアンデス山脈が走り,首都のキトはその山岳地帯の赤道直下に位置していますが,ほぼキトより東側がアマゾンの流域ということになります。

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