ピリーレイスの地図

 前回紹介した北キプロス・トルコ共和国の地図切手に描かれていたキプロス島の古地図は,トルコの海軍提督ピリー・レイスによるものですが,このピリー・レイスについては以前紹介したことのある1513年製作の地図が有名です。  上の切手がその地図を描いた切手で,コロンブスの地図(現存しない)の写しをもとにしたと言われています。大西洋をはさんでイベリア半島とアフリカの西部,そして新大陸の東部が描かれていますが,ちょうどイベリア半島と同緯度の新大陸の部分には,コロンブスがジパングと思いこんだ現在のイスパニョーラ島が縦長に描かれています。  なお,この切手は先日の北キプロス・トルコ共和国の切手と同様,1983年に「人類の偉業」をテーマに発行されたヨーロッパ切手ということで,このピリー・レイスはトルコ本国と北キプロス・トルコ共和国の2国で同じテーマの切手に取りあげられた英雄と言うことになります。

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古地図と衛星画像

 久しぶりの更新ですが,今日も前回と同様,北キプロス・トルコ共和国の地図切手です。上の小型シートは同国から1983年に発行された同年のヨーロッパ切手で,キプロス島の古地図と衛星画像が図案の2連刷を収めています。  このヨーロッパ切手というのは,ヨーロッパ各国において,毎年統一のテーマに基づいて発行される切手で(当初は統一図案の時代もありました。),この1983年は「人類の偉業」がテーマになりました。    前回も紹介したように,この北キプロス・トルコ共和国は世界的には承認されていない国です。ギリシャ系住民からなるキプロス本国はEUにも加盟し,当然ヨーロッパ切手も発行しているわけですが,この北キプロスも負けじとヨーロッパ切手を発行しているわけです。ちなみに,トルコ本国も古くからヨーロッパ切手を発行しています(ヨーロッパ切手の発行は1956年が最初でトルコは1958年から)。  ところで,今日の切手図案ですが,まさに人類の偉業の一つである衛星写真の画像が取りあげられていますが,これを画像処理した衛星画像地図はまさに現在の最新地図ということになり,(切手図案ではちょっとわかりにくいですが)詳細な起伏の表現は,古地図との対称で地図の歴史におけるその技術的変革を感じさせます。古地図の方は山地部の山並みが空想的・絵画的表現になっているのがわかります。  地図における,この絵画的山並み表現は,おおまかに言うと,近代的な測量が始まって各国が本格的な測量と地形図制作をはじめる時まで,地図の…

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北キプロス・トルコ共和国

 地図と新月を組み合わせたデザイン図案の切手が続きましたが,今日は戻ってイスラム色の強い新月と星をデザインにした国旗と地図が図案の切手です。  上の切手は1984年に北キプロス・トルコ共和国からトルコ人自治地域成立10年を記念して発行されたものです。北キプロスとは一般になじみのない国ですが,地中海東部に浮かぶ島国キプロス,実は8割のギリシャ系住民と2割のトルコ系住民の民族対立が独立当初からあり,1983年に北部のトルコ系住民が独立を宣言します。  その結果,キプロスは現在完全に国家分裂状態になっており,切手図案の地図にはその分断線が明示されています。しかし,その独立を承認しているのはトルコ本国だけという現状で,日本も承認していませんので,日本の地図を見てもこの線は描かれていません。

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