マン島

 先日紹介した伊能図は,伊能忠敬が1800年に測量を開始し,9次にわたる全国を巡った測量をもとに完成した最終版を1821年に幕府へ提出しました。  今日はそれとほぼ同年代の古地図ということで,1826年製作の地図が描かれた切手を取りあげました。上の切手は2007年にイギリスのマン島から発行された地図シリーズの1種です。このマン島はアイルランドとグレートブリテン島の間に浮かぶイギリス領の島ですが,郵政は独立しており,独自の切手を発行しています。  図案の地図を見ると,立体表現や町の市街図,沿岸沖合部の表現など西洋地図の特徴がみられ,伊能図とはまたちがった雰囲気を持っています。

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伊能図

 今日,私の地元の県で開催されている,伊能忠敬日本測量210周年記念「完全復元伊能図全国巡回フロア展」を訪れました。  江戸時代末期,日本で初の実測による科学的地図を製作したことで知られる伊能忠敬,その地図は総称して伊能図(正式には大日本沿海輿地全図)と呼ばれ,大図(214枚で日本全域),中図(8枚),小図(3枚)と縮尺の異なる地図があるが,日本だけでなくフランス,アメリカに分散していた副本の伊能図を完全復元して,体育館のフロアに敷きつめて,その上を自由に歩いて見ることができ,迫力と精巧さを堪能できるという展覧会です。  地図ファンとしてはたまらない企画ですが,岩石海岸と砂浜海岸の描写のちがいや詳細な地名の数々,各測量地点からの内陸部の山に伸びる多数の方位線など十分に堪能しました。  ということで,今日取りあげたのは,新文化人切手シリーズとして1995年に発行された切手の記念カードで,切手は伊能忠敬の肖像とともに伊能図のうちの中図の関東地方の部分が図案になっています。カシェの部分に切手図案の拡大図があるのでわかりやすいですが,海岸線の正確さが読み取れます。  外国には自国の古地図の切手をシリーズで発行している国がありますが,日本でも中図8枚で日本をカバーしているこの伊能図を,シリーズ切手として発行してほしいぐらいの史料価値のあるすばらしい地図です。

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ボン・コペンハーゲン宣言

 先日紹介した,ドイツのシュレスウィヒ-ホルシュタイン州は,北に続くデンマークとの国境沿いに位置し,その地理的位置からデンマークとの係争地になってきた歴史があると紹介しましたが,今日はその関連の切手です。  上のマキシマムカードに貼られている切手は,1985年に当時の西ドイツからボン・コペンハーゲン宣言30年を記念して発行されたものです。歴史的な背景から国境付近にデンマーク系,ドイツ系の両民族が混在していることから,1955年に両国からこれらお互いの少数民族の権利を認め合うために出されたのがこの宣言です。  切手図案には国境付近の地図が描かれ,お互いの国での少数民族となっている,ドイツ人とデンマーク人の分布を示しています。そしてマキシマムカードの葉書面には,さらに詳しくその民族分布を示す地図が描かれています。切手図案の内容を補足するようなマキシマムカードの図案の中でもこのように資料的価値の高いものは非常に参考になります。

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