鳥瞰図(5)

 鳥瞰図を描いた切手を色々取りあげてきましたが,今日も最後にもう1枚ということで,今までとは雰囲気のちがう鳥瞰図の切手です。  上の切手は1967年にアメリカから都市計画家会議開催を記念して発行されたもので,都市計画のモデル都市が3D表現の立体感あふれる図案で示されています。  このような都市の市街地における鳥瞰図も,先日紹介した吉田初三郎などと同様に人間による手書きの地図が多く作られていました。一つ一つの建物の高さ,配列,建物の間の緑地空間,道路形態など見る側にとっては視覚的にとらえやすことは言うまでもありません。  現在では,市販の道路地図帳などの市街地拡大図部分にも多く採用されている3D表現は,コンピュータ処理により簡単に作図でき,インターネット上で提供される画像地図でもよくみかける時代になった今,改めて人間が描き出す鳥瞰図や立体表現のすばらしさを再認識するこの頃です。

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鳥瞰図(4)

 今日も一昨日に続いて日本の地域を描いた鳥瞰図が図案の切手を取りあげますが,上の切手は1963年に発行された沖縄切手で,沖縄本島一周道路完成を記念したものです。  おおまかに言って南北に細長い沖縄本島を南側から俯瞰したパノラマ地図の様相を呈していますが,ほぼ海岸沿いに1周する道路の様子がよくわかります。後は地形の起伏をよく表現しており立体感あふれる地図になっていますが,見た目は非常にシンプルな感じがします。町並みや地名などは一切記されていません。逆にそれが図案のねらいかもしれませんが。    パノラマ地図と言えば,日本では大正から昭和中期に活躍し,1600点を超える鳥瞰図を描いた鳥瞰図絵師の吉田初三郎の名がすぐ出てきますが,現在でも根強い人気があり,古地図の展示即売会などでは必ず登場します。色彩豊かに町並みや名所,地名なども記されたパノラマ地図は,誇張された表現も含めて見事というほかありません。  日本切手には国際文通週間シリーズなどに浮世絵切手が多く登場していますが,この吉田初三郎の鳥瞰絵図シリーズなどもぜひ切手に登場させ,そのすばらしさを切手を通して広めてほしいものです。

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鳥瞰図(3)

 鳥瞰図を描いた切手が続きますが,今日は日本切手を取りあげました。上の切手は1987年に木曽三川近代治水100年を記念して発行されたものです。  木曽川の河口付近は長良川と揖斐川が合流して低湿地帯を形成し,堤防で囲まれたいわゆる輪中地帯として有名な所です。古くから水害に悩まされたこの地域では,1887年からオランダ人技師の指導で三川分流工事が行われたわけですが,切手図案の右側(東側)が木曽川,中央部が長良川,左側(西側)が揖斐川となります。  印面中央部の川に囲まれた川中島が長島輪中の北部に当たり,その西側の揖斐川と長良川を分けているのが,江戸時代の宝暦4年(1754年)に,多くの犠牲者を出しながら薩摩藩士が幕府の命により治水工事を行って完成させた曰わく付きの,千本松原締切堤です。現在は堤防上に道路が走っています。さらに図案の鳥瞰図から長島輪中北部を通って3つの川をまたぐ道路橋が走っているのもわかります。  ただデザイン的には,鳥瞰図としては立体感に欠けるのが残念で,堤防とか松原の松の木をもっとリアルに表現してほしいような気がします。

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