ドニエストル

 昨日,グルジア内のアブハジア,南オセチア両共和国がロシアによって国家承認されたことを書きましたが,これと類似した状態にあるのがコーカサスからは少し北西へ移動しますが,ルーマニアとウクライナにはさまれた,旧ソ連からの独立国モルドバ共和国内にあるドニエストルです。  モルドバにはルーマニア系モルドバ人が多く居住しますが,東部のドニエスル川東岸地帯のウクライナとの国境地帯にはウクライナ人やロシア人が多く居住し,グルジアの2地域の場合と同様に,モルドバからの独立を宣言し,沿ドニエスル共和国と称して独自の切手も発行しています。  上の切手は1994年に,そのドニエストルから発行された地図切手で,同地域の細長い形態がよくわかりますが,印面右上には小さい囲み地図でヨーロッパの中における同地域の位置が示され,黒海北西部にあることがわかります。  ただ,このドニエスルの場合はグルジアのアブハジアや南オセチアとちがって,直接ロシアの領土と地続きではなく,ロシアとの関係が微妙なウクライナと接している地域だけに,ロシアとの関係もより複雑になっています。

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アブハジア

 グルジアの南オセチア紛争は,ロシアが先日,その南オセチア共和国と同じくグルジア内にあるアブハジア共和国の2国を国家承認するという事態になりました。  民族の十字路コーカサス地方は本当に民族分布が複雑ですが,この3地域の民族を整理すると,次のようになります。グルジア人はコーカサス系言語のグルジア語を話しグルジア正教を信仰しているのに対して,南オセチアの住民オセット人は,イラン(ペルシア)系言語の民族で宗教も同じ正教ですがロシア正教を信仰します。そして,アブハジアのアブハズ人はグルジアと同じコーカサス系言語ですが信仰する宗教はイスラム教です。  ソ連解体後のグルジア独立で,グルジア内に自治共和国として位置づけられていたこれら2つの地域についてもグルジア化が進められますが,それに反発してこれら2つの地域は共和国として独立を宣言し,ロシアが援助する形で実質上グルジアの主権が及ばない独立状態の中でロシア化が進みました。今回はそれをロシアが正当な独立国として承認したということになります。  今日取りあげた切手は,グルジアからの独立宣言後にアブハジアから発行されている独自切手の一種で,国旗色デザインの地図と紋章が図案になっています。図案の地図でわかるように黒海に面した同地域はグルジア北西部に位置しています。

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アフガニスタン 2

 昨日に続いてアフガニスタンの地図切手です。現在の同国は治安の悪化で,観光旅行どころではない状態ですが,上の切手は1968年に発行された旅行者用の宣伝切手で,同国の主要道路網が描かれているルートマップですが,切手発行当時の1968年は共和制に移行する前の王国時代で,タリバンによって破壊されたバーミヤンの遺跡など観光資源もあり,外国人観光客も訪れることのできる状態だったことを示しています。  ちなみに,図案の地図には地名も多く記載されていますが,字が小さく,印刷技術の影響もあってルーペで覗いても判読できないのが残念です。  しかし,国土の形態ははっきりとわかりやすい輪郭で描かれており,北東部へ細長く突き出した部分が特徴的ですが,これは昨日も書いたロシアとイギリスの勢力争いにおける緩衝地帯としてアフガニスタン領になったワハン回廊と呼ばれる地域です。現在,この回廊の南北両側の国はどこでしょうという問題があれば,特に北側についてはかなりの難問になるかもしれません。

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