ヴァルトゼーミュラーの地図(2)

 昨日紹介した1507年のヴァルトゼーミュラーの地図は,世界図の中のアフリカ部分だけを印面に描いたものでしたが,実はこの世界図は地図の歴史上においては,非常に重要な意味を持つ地図となっています。  すなわち,コロンブス後の探検航海でアメリゴ・ヴェスプッチがこの大陸を新しい第四の大陸という考えを示し,それを初めて反映させたのがこの地図ということになります。  したがって,世界全図の中にヴェスプッチの主張を取り入れて,新しい大陸を左端に細長く描き入れ,アメリゴの名からアメリカと大陸名を,現在の南米部分に書き入れた「アメリカを初めて記載した地図」の誕生となったわけです。  上の切手は,新大陸到達500年をテーマとした1992年のヨーロッパ切手としてフランスから発行されたもので,そのヴァルトゼーミュラーの地図の南米部分だけを描いた地図が図案の一部になっていますが,拙著「切手が伝える地図の世界史」では,12枚の図幅からなるこの世界図全体が描かれた切手のフルシートを掲載しています。そして,シートの耳紙にも地図の一部が描かれており,ちょうど切手図案と同じようにAMERICAと記載された部分も示されています。

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