コーサの地図(3)

 昨日までのコーサの地図については,キューバなどカリブ海の島々を,ほぼ位置関係も正しく描いていると紹介しましたが,切手印面上ではわかりづらい面があります。  そこで今日は,拙著「切手が伝える地図の世界史」では取りあげていませんが,そのコーサの地図のキューバ周辺の拡大図を図案にした地図切手を紹介します。上の切手は1973年にキューバから発行されたキューバの地図シリーズの一種です。  方位盤の位置は,実際の地図ではもう少し南にあるのですが,切手図案に入るようにキューバのすぐ南に描いています。この地図でわかるようにキューバとその南岸の島々,そしてジャマイカ,さらに印面右下に続くのがイスパニョラ島ということになります。右上の大きな島は実在しません。  さらによく見ると,当時のスペイン国旗がこれらの島々に描かれ,その領有をはっきりと示しています。この国旗を描く手法は当時のポルトガルやスペインの地図では一般的です。いずれにしても,この地図がキューバを島として描いた最初の地図ということになります。

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コーサの地図(2)

 昨日紹介したコーサの地図には,アメリカ大陸のすぐ東に縦の線が濃い色ではっきりと示されています。  これは当時,東へ西へとアジアへの進出を争ったポルトガルとスペインが,新しく到達した土地に関してその領有の境界を明確に決めた条約にもとづくもので,境界線の西側の土地はスペイン,東側の土地はポルトガルと決められたわけです。  このコーサの地図では,キューバなどカリブ海の島々も含めて南北アメリカ大陸のほとんど全てが,スペインの土地であることを主張するように描かれています。  なお,新刊の拙著「切手が伝える地図の世界史」では,このコーサの地図の境界線以西の部分だけを描いた地図を載せ,料額印面にコーサの肖像を図案として使った,スペインのめずらしい官製絵入り葉書も紹介しています。

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コーサの地図

 先日コロンブスの兄弟の地図を紹介しましたが,今日はコロンブスの第2回航海に水先案内人として同行したファン・デ・ラ・コーサの地図が描かれた切手です。  上の切手は(小型シートの切手部分)は2000年にスペインからコーサの地図500年を記念して発行されたものです。すなわち,この図案の地図が製作されたのが1500年ということになり,1493~96年のコロンブスの第2回航海の成果を取り入れた地図として意義あるものです。現在はマドリードの国立海洋博物館に所蔵されています。  図案の地図がちょっとわかりにくいのですが,中央左(西)の方に第1回航海で到達したイスパニョラ島,そして第2回航海で到達したジャマイカ島,プエルトリコ島,さらに第1回,第2回航海で沿岸を航行したキューバの位置関係がほぼ正しく描かれています。(左上方と下方の濃い色の部分は現在の南北アメリカ大陸の部分を示しています)  コロンブスはキューバをアジア大陸の一部と考えましたが,このコーサはキューバを島として描いている点が注目されます。また,この地図はヨーロッパ,アフリカとアメリカを同時に描いた最初の地図という評価がありますが,アメリカが新大陸との認識はなく,同時期にインド航路を開拓したポルトガルの地図とちがって,地図中央部のアフリカ大陸の形態は正確ではありません。

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