メルカトル図法世界図

 先日のメルカトル図法の地図は太平洋中心の地域だけで,しかも高緯度地方は描いていませんでした。そこで今日は南極大陸をのぞいた世界全図という感じのメルカトル図法の地図切手です。  上の切手は,1956年にドイツから国際警察展を記念して発行されたもので,図案の地図は経緯線間隔を15度で描いたメルカトル図法の地図です。高緯度の緯線間隔が大きく拡大し,実際には南米大陸のほぼ8分の1の大きさしかないグリーンランドが,地図上ではその南米大陸より大きく描かれているという面積のひずみが生じています。  したがって,高緯度の両極地方を省略して描く場合が多いわけですが,それでも北半球のカナダやロシア北部はかなり大きく描かれており,大国がより大国に見えるという結果になっています。

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メルカトル図法

 先日,世界地図変遷史に対してもう一つの地図史があると書きましたが,その「もう一つの地図史」の中には地図投影法の考案の歴史があります。  球面の地球をいかに平面の地図に描くか!という地図投影法は,古代プトレマイオスが世界を円錐図法で描いたように古くから考えられ,アメリカを初めて記したヴァルトゼーミュラーの世界図も地図投影法の原理を用いています。  地球上の正反対の地点である2箇所をそれぞれ中心として二つの平射図法の半球図を並べて世界全図にしたものも古くから用いられていますが,1569年にメルカトルが考えた世界図は,経緯線の間隔を同じ拡大率で描いて直交させ,任意の2地点間の直線が等角航路を示すという画期的な地図で,地図の形を長方形というイメージにした図法で長らく世界地図の定番として使われてきたわけです。  上の切手(料額印面)は,そのメルカトル図法で描いた太平洋中心の地図で,ハワイで発行された外信用の官製葉書です。

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マゼラン海峡

 アフリカを周回し,インド航路を開拓して東へ進んだポルトガルに対して,大西洋を西へ進んだスペイン。この両者の東西への道のりを結びつけたのが世界周航を成し遂げたマゼラン隊ということになります。  マゼランは1520年に南米大陸南端を周回してマゼラン海峡を通過して太平洋に出ます。しかし,彼は海峡のすぐ南側の陸地(フェゴ島)を島と認識できず,その存在が信じられていた未知の南方大陸の一部と考えたことがその後の地図にも反映されます。  上の切手は,探検家と地図を図案に,新大陸到達500年を記念してハンガリーから発行(発行年は1991年)された切手の1種で,マゼランとともに,マゼラン海峡とその南に南方大陸を描く地図が図案になっています。この南方大陸の存在が否定されるのは18世紀後半のクックの航海を待たねばなりませんでした。  このマゼランの航海により,太平洋をどう描くか,アジアと北米大陸の関係をどう描くかという課題を持ちながら,地図製作者達による地図の歴史が続くことになります。

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