三角網

 真の世界地図が完成していく一方,測地学の立場から精密な測量による地図の製作がはじまり,フランスではカッシニ一族が初めて三角測量に基づく地形図製作を開始したが,その測量の成果により,地球は完全な球体ではなく南北に長い楕円体という考えが出される一方で,ニュートンなど重力に関する研究から,地球は東西に長い楕円体という反対の考えが出て対立した。  そのためフランス学士院は1735年から赤道付近の南米ペルーと,高緯度の北緯66度付近のラップランド(現フィンランド~スウェーデン)に測量調査隊を派遣して子午線の弧長を測量した結果,後者の方が子午線弧長が長く,ニュートンなどの主張が正しいことがわかった。  これを受けてフランス学士院は1740年から国内の子午線弧長の再測量事業を実施し,カッシニ一族により長い年月をかけて1818年に全土の地形図を完成させます。  上の図案の地図は,ラップランドの測量時に完成した三角網で,スウェーデンから1982年のヨーロッパ切手(歴史的事件がテーマ)を収めた切手帳の表紙デザインとして描かれたものです。

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ウェゲナーのパンゲア

 地図の歴史の中における地図投影法の考案は,地理学の発展にともなう「主題図の登場」と関係していると先日書きましたが,その主題図の発展に大きく貢献したのが,自然地理学の祖と呼ばれるドイツの探検地理学者フンボルトで,彼は南米探検の報告書で植生帯の分布を気温との関連で等温線を用いて示している。  今日紹介するのは,そのような主題図の一つで,同じく自然地理分野で活躍した気候,地質学者で極地探検家でもあったウェゲナーが著した「大陸移動説」の中に示された大陸復元図です。現在の大陸が一つにまとまって形成されていたパンゲア(超大陸)を描いた地図(3億年前の大陸分布)が図案の記念印が押された,ウェゲナー没後50年を記念する切手で,オーストリアから1980年に発行されたものです。

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グード図法

 先日のメルカトル図法の地図が高緯度ほど面積のひずみが大きくなるのに対して,面積の正しく表された正積図法が,主題図の登場とともに分布図に適した図法の必要性から,次々と考案されるようになった。  すでに考案されていたサンソン図法やモルワイデ図法の世界図は,中央経線付近に対して両端では大陸の形のひずみが大きいことから,中央経線を複数取り,海洋部で断裂させる断裂サンソン図法や断裂モルワイデ図法をアメリカ人グードが考案します。  そして,この二つの図法の緯度40度44分の緯線が同じ長さになることから,それぞれの形のよさの長所を取って,その緯度より高緯度側をモルワイデ図法,低緯度側をサンソン図法で描いて合成したグード図法を考案します。  上の切手は,世界全図によく用いられるそのグード図法を描いた地図切手で,1964年にキューバから第15回UPU(万国郵便連合)会議を記念して発行されたものです。

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