FDCのカシエ

 先日,ウェゲナーの大陸移動説にともなう超大陸(パンゲア)の存在を示す地図を描いた消印を紹介しましたが,これは地球の歴史における大陸分布ということで,主題図の一つになります。  このように主題図はまず自然地理分野において,数多くの探検や調査に基づいて製作されるようになります。その後,人文地理学の分野でもその学問的発展にともない多くの主題図が登場することになります。 いずれにしても,特定のテーマで描いた主題図は地理学の研究には欠かすことのできないものですが,今日はそのうち人文地理学の分野の主題図を描いた切手を取りあげました。  上の切手は1976年にフィンランドから同国の言語協会100年を記念して発行されたもので,同国の言語(方言)分布を示す地図が図案に描かれています。しかし図案はあくまで分布図だけで,具体的な言語の区別の説明まではなかなか印面には表せません。  しかし,FDCのカシエ部分に図案と同じ地図を描いて,補足説明を書き加えるといったデザインのものが登場すると,資料的価値が倍増します。テーマティク作品には使えないFDCのカシエですが,利用,収集価値の高いカシエは多く存在します。  今週末に東京大手町の「ていぱーく」で開催されるサマーペックス08(夏休み切手まつり)の1日目,8月2日(土)の午後3時から,同会場内で拙著「切手が伝える地図の世界史-探検家と地図を作った人々-」の出版記念講演(トーク)を行います。取りあげた切手も紹介しながら地図の歴史をたどり,ブログ名の…

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地形図切手(2)

 今日も地形図切手ですが,上の切手は1970年にトルコから地形図製作75年を記念して発行されたものです。ということは同国では1895年に地形図製作が開始されたことになり,日本とほぼ同時代と考えてよいことになります。  図案の地図を見ると,印面右側寄りには等高線の入った地形図が描かれていますが,左側および上下周囲には山岳地帯を「ボカシ」の表現で描いた地形図が示されています。この「ボカシ」は北西の方向から光を当てた想定でその陰影の濃淡で起伏を表現する方法で,外国の地形図にはしばしばみられるものです。  なお,印面中央部には航空機が描かれていますが,地形図製作は切手発行の1970年当時,航空機から撮影された空中写真を利用して実体視(立体視)することにより位置や高度を測量する空中写真測量が,従来の現地での測量に変わって主流になったことを示しています。  この空中写真の利用は,地形図製作の歴史において,いわば地図の技術革新とも言うべき画期的なものでした。

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地形図切手

 フランスではじまった測地事業と地形図製作は,18~19世紀には他のヨーロッパ諸国でも,国家事業として同じように行われるようになり,その後20世紀には英仏の植民地でも地形図製作が着手されます。  上の切手はアフリカ南部のレソト王国から1996年に発行された地形図シリーズの切手で,イギリス植民地時代の1911年に製作された地形図そのものが図案になっており,純地形図切手とも言えるものになっています。  実際には10面シートで構成されており,そのうちの4枚分だけを示しましたが,山岳国レソトの等高線がびっしりつまった地形図ということで,谷や尾根を読み取るという地形図の読図演習ができそうな地図切手です。  図案をよく見ると,9400という標高の数字が見えますが,これはもちろん9300mではなく,9400フィート(約2800m)の高さということになります。

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