ベッサラビア(ルーマニア)

 先日紹介した拙著「切手が伝える地図の世界史-探検家と地図を作った人々-」は彩流社の切手で知ろうシリーズの第4作として刊行されたものですが,同じ彩流社からの切手紀行シリーズ「タイ三都周郵記」の著者で現在ルーマニアを巡っておられる内藤陽介さんに関連して,今日はルーマニアから発行された地図切手を取りあげました。  ルーマニア東部のモルダビア地方は,広域的にはその東の隣国で,旧ソ連の一部からその解体により独立した現モルドバ共和国も含まれます。この広域的なモルダビアは中世モルダビア公国の範囲とほぼ一致します。  すなわち言語・民族的には,モルドバ語はルーマニア語系,モルドバ人もルーマニア系ということになります。歴史的にはベッサラビアと呼ばれる,この現モルドバ共和国の地はルーマニアとロシア間に位置するため,その領土争いに巻き込まれ,第一次大戦後ロシア領からルーマニア領,そして1940年再びソ連が占領しますが,1941年今度はルーマニアがドイツの支援を受け奪い返します。  上の切手は,そのルーマニアから1942年にソ連からのベッサラビア解放1周年を記念して発行されたもので,ベッサラビア(現モルドバ共和国)の地図がヒトラーやムッソリーニとともに描かれています。  その後1944年に再度ソ連が侵攻してソ連領に再編され,ソ連内のモルドバ共和国になりますが,ソ連崩壊にともない1991年に独立します。独立時にはルーマニアとの合併気運もありましたが実現していません。

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北極(ソ連)

 昨日まで南極大陸の地図切手を続けてきましたが,この南極で各大陸の地図切手の紹介はとりあえず終了ということになるのですが,南極大陸の地図に対して,同じく未踏の地として長らく残されていた北極圏の地図ということで,最後にもう1枚取りあげたいと思います。  上の切手は1932年の第2回国際極年(世界各国が協力して,新しい技術により極地の気象観測などを行う)に合わせて,当時のソ連から発行された航空用切手で,北極点を中心に描いた地図が図案になっています。  この図案の地図をよく見ると,カナダ側は北緯70度付近から,グリーンランドやソ連を含むユーラシア大陸部は北緯60度付近から描いています。イギリス人や独立後のカナダの探検,調査の成果によるカナダ北部の北極海諸島,そしてヨーロッパ,ソ連北部のスバールバル諸島,さらにゼムリャフランツァヨシファ,セーベルナヤゼムリャなどの20世紀はじめに詳しく調査された島々がはっきりと描かれ,完成された北極圏地図ということになります。

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南極(ハンガリー)

 南極大陸を描いた地図切手として,その領有を主張する7つの国について,いわゆる領有主張切手を紹介してきましたが,今日はその国のうち最初の南極点到達争いを演じたノルウェー(アムンゼン)とイギリス(スコット)の両雄がそれぞれ描かれた南極大陸の地図切手です。  上の2枚の切手は1987年にハンガリーから発行された南極大陸探検家シリーズの切手を貼った初日カバーから抜粋したものですが,左側がアムンゼン,右側がスコットです。  両方の切手図案の地図は,南極大陸の海岸線を正確に描いた同図案の地図になっており,消印の地図も同様の地図になっています。  ちなみに,この南極点到達争いはご存知のように,アムンゼンが少し早く1911年12月14日に到達することになります。

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